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下請労働者の転落事故、元請建設会社の責任は?

  • 執筆者の写真: office138
    office138
  • 2021年1月25日
  • 読了時間: 2分

精神疾患の労務トラブル
下請転落事故・元請責任は?

Q:当社は建設業です。下請建設会社の足場組立作業者が転落し大ケガする労災事故が発生しました。この場合、当社(元請)の責任は生じますか?




A:元請企業にも安全配慮義務違反による賠償責任が生じる可能性があります。

(1)元請企業の責任

 現在の裁判例では、下請労働者の労災事故に対する元請企業の賠償責任を認める多くの判決があります。


 これらの判例は、元請企業と下請労働者間の「実質的な使用関係」あるいは「直接的または間接的指揮監督関係」が認められる場合に、元請企業の安全配慮義務違反を根拠に賠償責任を命じています。


 最近の裁判例では、三菱重工神戸造船所事件(最判平 3.4.11民集162.295)において、下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備、工具等を用い、事実上元請企業の指揮、監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の労働者とほとんど同じであり、元請企業と下請労働者間の「実質的な使用関係」が認められるとして安全配慮義務違反による労災民事賠償責任を認めています。


 なお、労働安全衛生法 第30条には、元請企業(特定元方事業者)に対して「下請の労働災害を防止するために、協議組織の設置・運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視、下請が行う安全衛生教育の指導・援助、仕事の工具及び機械・設置等に関する計画を策定する」等の義務が課されています。この「元請企業(特定元方事業者)」に対しては、先述の「実質的な使用関係」あるいは「直接的または間接的指揮監督関係」が認められやすくなります。すなわち、賠償責任が生じやすくなるということです。


(2)元請・下請間の責任割合

 一般的に、過失割合が明確でなく各業者間の協議ができない場合には、共同不法行為等によって各業者は平等の責任を負うとしています(大判大8.11.13)


しかし、過失割合が判断できる事案については、事故発生への関与の程度を考慮して責任割合を判断しています(最判平3.10.23 大塚鉄工・武内運送事件)。


(3)死亡・後遺傷害事故は高額賠償につながるため保険付保を忘れずに

  • 元請企業が「下請が保険に入っているから当社は保険に入らなくてもいいでしょ」

  • 下請企業が「元請が保険に入っているから当社は保険に入らなくてもいいでしょ」


 いずれも通用しません。(2)で説明したように責任割合がありますので、高額賠償に備えて労災上乗せ保険に加入しておきましょう。

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